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水氷の塔【水属性限定/水無し】 概要 フロア1.忍び寄る魔手 フロア2.鏡水の回廊 フロア3.神威の騎士 フロア4.灼熱の御霊 フロア5.海を裂く大槍 コメント 水氷の塔【水属性限定/水無し】 概要 風樹の塔をクリアすると出現する。 全てのフロアをクリアすると魔法石を1つもらえる。 「 メイン属性が 水属性 のモンスターのみ 」で編成されたPTだけが挑戦でき、さらに「 水ドロップが出現しない 」制限付きダンジョン。 通常の方法では攻撃できないので、以下のいずれかを満たすモンスターが必須となる。 ドロップ変換系のスキルを持つモンスター サブ属性に 水属性 以外 のモノを持つモンスター (おすすめ:樹のアイスオーガ) 攻撃スキルを持つモンスター 「ケルピー」を入手することができる唯一のダンジョンである。 常設ダンジョン(ノーマル/テクニカル)の中では「氷結獄・フロストデーモン」を進化した状態で入手することができる唯一のダンジョンでもある。 すべてクリアすると次ダンジョンは猛炎の塔 モンスター名 HP 防御 攻撃 タ | ン 使用スキル 備考 スキル名 効果 マリンゴブリン 28 646 3 回復妨害 回復ドロップがお邪魔ドロップに変化 Lv2マリンゴブリンをドロップ サファイアドラゴン 192 2 Lv1サファイアドラゴンをドロップ バブルキメラ 50 248 2 連続攻撃 連続攻撃348(174×2)ダメージ Lv1バブルキメラをドロップ ペンペンドラ 204 2 ようすを見ている 何も起こらない Lv1ペンペンドラをドロップ 神化の碧面 18 60,000 9,999 6 ファイアバインド 火属性モンスターが数ターンの間、行動不能 Lv1神化の碧面をドロップ サファペンドラ 192 2 ようすを見ている 何も起こらない ※稀に出現 Lv1サファペンドラをドロップ フロア4以降出現 フロストデーモン 773 1 リーフバインド 木属性モンスターが数ターンの間、行動不能 ※フロア4以降出現 Lv2フロストデーモンをドロップ ※備考に特別な記載がなければそのモンスターは「 全フロアで出現 」します。 ※出現フロアが限られているものの情報は備考欄へお願いします。(記載例:※フロア3以降出現) ※HPは、グラビティ系を使用しての推測値です。 ※各フロアで固定バトル(Boss含む)のモンスターは 宝箱のみドロップします(卵のドロップはありません) 。 ※一部例外があり、他のノーマル/テクニカルダンジョンで入手手段があるものは卵をドロップする模様。 フロア1.忍び寄る魔手 【スタミナ:13 バトル:7】 獲得経験値の目安:870 バ ト ル モンスター名 HP 防御 攻撃 タ | ン 使用スキル 備考 スキル名 効果 B7 クラーケン×2 143,787 220 2,732 3 大連撃 連続攻撃4,917(1,639×3)ダメージ Boss 宝箱(10,000)をドロップ ※HPは、グラビティ系を使用しての推測値です。 フロア2.鏡水の回廊 【スタミナ:13 バトル:7】 獲得経験値の目安:1455 バ ト ル モンスター名 HP 防御 攻撃 タ | ン 使用スキル 備考 スキル名 効果 B7 愛と水の精霊・ウンディーネ 186,220 294 2,668 2 スキルガード 10ターンの間状態異常を無効化 Boss 宝箱(10,000)をドロップ キュアー HP中回復(50%程度?) ※HPは、グラビティ系を使用しての推測値です。 フロア3.神威の騎士 【スタミナ:13 バトル:7】 獲得経験値の目安:1517 バ ト ル モンスター名 HP 防御 攻撃 タ | ン 使用スキル 備考 スキル名 効果 B6 神化の碧面×3 18 60,000 9,999 6 ファイアバインド 火属性モンスターが数ターンの間、行動不能 Lv1神化の碧面をドロップ B7 フェンリルナイト・カムイ 116,514 3,800 1,545 1 氷刃乱舞 連続攻撃2,472(618×4)ダメージ Boss 宝箱(15,000)をドロップ 攻撃態勢 5ターン攻撃力上昇(1.25倍) ・通常攻撃:1,931ダメージ ・氷刃乱舞:3,090ダメージ ※HPは、グラビティ系を使用しての推測値です。 フロア4.灼熱の御霊 【スタミナ:13 バトル:7】 獲得経験値の目安:903 バ ト ル モンスター名 HP 防御 攻撃 タ | ン 使用スキル 備考 スキル名 効果 B6 ケルピー×2 4,287 54,000 5,658 3 攻撃力2倍(一体になると使用) Lv2ケルピーをドロップ B7 焔の霊魂・ウィルオーウィスプ 4,367 54,000 2,896 1 Boss 宝箱(15,000)をドロップ ※HPは、グラビティ系を使用しての推測値です。 フロア5.海を裂く大槍 【スタミナ:16 バトル:10】 獲得経験値の目安:1850 バ ト ル モンスター名 HP 防御 攻撃 タ | ン 使用スキル 備考 スキル名 効果 B5 ケルピー×3 4,287 54,000 5,658 3 Lv2ケルピー/宝箱をドロップ B8 氷結獄・フロストデーモン 170,280 320 2035 1 イビルスラッシュ 連続攻撃3,666(511×6)ダメージ Lv2氷結獄・フロストデーモン/宝箱(10,000)をドロップ B9 焔の霊魂・ウィルオーウィスプ 4,367 54,000 2,896 1 ファイアーボール 3520 宝箱(10,000/15,000)をドロップ B10 海王神・ネプチューン 53,327 30,000 10,868 3 気合溜め 海神の槍 次回攻撃時ダメージ2倍(21,736ダメージ) 連続攻撃16,302(8,151x2)ダメージ Boss 宝箱(15,000)をドロップ ※HPは、グラビティ系を使用しての推測値です。
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◆ Lv.1 咬魚 ◆ Lv.2 人食いザメ ◆ Lv.3 スノーレディ ◆ Lv.4 アルケパイン ◆ Lv.5 竜金 ◆ Lv.6 牙魚 ◆ Lv.7 ハンマヘッド ◆ Lv.8 ヘクトアイ ◆ Lv.9 ネプトゥーネ ◆ Lv.10 クロイドン ◆ Lv.11 スティンガー ◆ Lv.12 スカーレット ◆ Lv.13 トリトーン ◆ Lv.14 人面ザメ ◆ Lv.15 チェスタトン ◆ Lv.16 アルビオン
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デッキ名 わだつみ主体ランカーデッキ ・メインPT わだつみ マカラ アクアライダー ・サブPT みずち ニクサー 解説 ランカー型の神族メタ強力デッキ。アルカディアなどの雑誌にも載ったデッキ。 攻撃属性は闇に偏っている。 さらにプレイヤー闇レイピアOK3神単ウマー。撃武器にすれば魔種とも戦いやすい。 みずち&ニクサーのおかげでライン上げたまま攻めることも可能。 このデッキへの対抗策 共通 シールドを封印して、アルカナ制圧に走る。あるいは、最初のぶつかり合いでわだつみを潰す。みずちがいれば、そちらを潰した方が、回復しながらうろつかれる心配はなくなる。 以下、種族ごとの対策 神族 オーディン・ゼウス・セルケト&ユニコーン・愛染明王といった面々がいれば戦いやすいが、相手は闇だらけ。アルカナ制圧が安全策か。 魔種 撃はそれほどいないため、うまく立ち回れば戦闘でも優位に立てる可能性がある。ただし、魔種の戦闘向き使い魔はスキル無しが多いため、移動速度でかき回されてゲートなどを封印されないように注意。また稼動時から使用率トップのサキュは戦闘でも重要な役割を持つため、落とされないように注意。エキサイトキッスの打ち所にも注意。距離が開いていると逃げられる。 超獣 相手に炎属性はない可能性が高いが、こちらも雷がない可能性が高い(クァールのみ)。そして何よりスキル持ちが全然いないといっていい数なので、ゲート・シールド封印に注意。 亜人 属性は超獣と同じ。超獣よりスキルはマシだが、主力となりゆる使い魔の移動速度が低めなので、移動速度でかきまわされないように注意。 海種 同族であるため、やはり属性で優位に立つのはきびしい。移動速度も互角。アルビオンがいればシールド封印からの逆転が考えられるが、アルビオンがいないとなると、わだつみやリヴァイアサンなどの高コストがいないと戦闘でもかなりの苦戦を強いられるが・・・ 機甲 海種と同じくやっぱり属性では優位に立てない。しかし、罠を当てることができればかなり消耗させることができる。デネブ・アルタイル・ポルックスといったアルカナ持ちを守りきり、アルカナストーンへ猛進すれば・・・勝てるハズ。 不死 わだつみがいる。ただ、それだけで怖い。しかし、シールド制圧からアルカナ制圧を行えば何とかなるハズ、またC使用率最下位(8月23日時点)のゾンビ·ブービーの愛され王スペクターがいれば戦いやすくはなる。使用率貢献にいかがでしょうか。あるいは、ネクロマンサー。 補足 コメント *編集が苦手な方はこちらへデッキ案、訂正指摘等々、お願いします テンプレじゃなくて「わだつみ主体ランカーデッキ」の方が聞こえがいいかと…… -- (名無しさん) 2008-09-19 01 11 44 ↑了解しました。 -- (名無しさん) 2008-09-19 20 17 31 名前 コメント すべてのコメントを見る
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前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「見えた。魔法学院よ」 王都トリスタニアからわずか数分の旅。空から見る五芒星を象った 塔の並びは、ルイズにはとても懐かしく思えた。 授業中らしく外に人気はない。ふがくは二人を抱えたまま、一番目立たない ヴェストリの広場にするりと降り立った。学院に足をつけて、ルイズは 力が抜けたようにへたり込む。 「……帰ってきた……のね」 「ああ。僕たちは帰ってきた。この魔法学院に」 ギーシュの言葉にも感慨深さがにじみ出る。わずか二日半。けれど、 その間に見たことは、あまりにも多すぎた。ルイズが何とか脚に力を 込めて立ち上がろうとしたとき、広場に三人のメイジが現れた。 「……お帰り。ルイズ」 ルイズに手をさしのべ、そう言葉をかけたのはワルド。その後ろでは エレオノールが眼鏡のフレームに指をかけて怒りを抑えている。 その二人の後ろで、オスマンがにこやかに微笑んでいた。 「子爵さま?それに姉さま?オールド・オスマンまで……」 驚くルイズ。エレオノールは相変わらず怒りを抑えたまま眉を寄せている。 そこにオスマンがねぎらうように言った。 「三人とも、よく無事で戻ってきた。ワシは、まずそれを喜びたい」 オスマンの言葉には感慨がこもる。正規の軍人でも失敗する可能性の ある任務だった。誰かが戻ってこなくともおかしくない任務だった。 しかし、ふがくはルイズとギーシュを生きて連れ帰ってきた。しかも 目立った怪我もない。事情を知らないエレオノールの手前、多くは 語れなかったが、その言葉には万感の思いがこもっていた。 だが、事情を知らないからこそ、エレオノールは小さく溜息をついた。 「……まったく。姫殿下のお願いがどんなものかは知りませんが、 その様子だと時間がかかった以外たいしたことはなかったようね」 「姉さま……それは……」 たいしたことじゃないことなんてない――そう言おうとしたルイズを、 ふがくが遮る。 「そうね。そう思ってもらって結構だわ」 「……あなたが『フガク』。おちびが呼び出した使い魔がどんなものかと 思ったけれど……」 そう言ってエレオノールはふがくを検分するように見る。異国の服装に ハルケギニアの常識では飛べそうにない鋼の翼――オールド・オスマンの 話ではここからトリスタニアまでほんの数分で飛ぶらしいが、可動部が ほとんどなく魔力を得て飛ぶには不適切な形状だ。それに脚も見たことも ない車輪状――こっちは材質さえ分からない。だが、ふがくはそんな エレオノールの思惑をよそに、静かに言う。 「……訂正願います。私は『ふがく』。異国の名前とはいえ発音を間違えるのは 失礼に当たるのでは?」 「確かにそうね。それは失礼したわ。それはそうと、元の国では士官待遇 だったそうね。アカデミーの主席研究員としては、異国のガーゴイルと あらばじっくり調べさせてもらいたいけれど……」 「国家機密は易々と明かせないわね。それに、この国じゃ私の指一本 動かすだけでもあと数百年はかかりそうだけど」 ふがくとエレオノールの間に飛び交う冷たい火花。ふがくに背負われた デルフリンガーが「おお怖え怖え」とつぶやくが、二人は軽く無視した。 そんな空気を何とかしようと、ルイズが二人に割って入る。 「あ、姉さま。落ち着いて下さい。第一、どうして姉さまがここに?」 ルイズは気づかなかった。自分が進んで地雷原に足を踏み入れたことに。 エレオノールは髪をぶわっと逆巻かせると、ルイズの頬を抓り上げる。 「あなたが!家に請求書を回されるようなことを!するからでしょうが!」 「あびぃ~~~、ずいばぜん~~~、あでざばずいばぜん~~~」 頬を抓られたまま、半泣きでルイズがわめく。その様子にギーシュは あんぐりと口を開け、ワルドは片手で顔を覆う。しばらく抓り上げて 気が済んだのか、エレオノールは指先をぴっぴと払うとルイズに向き直る。 「まったく。さあ、帰るわよ。早く準備なさい」 「え?帰るって……」 「父さまと母さまが、あなたから直接理由を聞きたいとのことよ」 エレオノールのその言葉にルイズの顔から血の気が引く。 しかし、その理由を知らないふがくは涼しい顔だった。 ――かくして。ルイズは姉エレオノールによって半ば強引に帰郷させられることになった。 ルイズが戻ったので王宮に帰還するワルドに見送られて、エレオノールが 自分が乗ってきた馬車にルイズと一緒に乗り込み、学院から強引に借り受けた 馬車にふがくとシエスタを詰め込んで――特にシエスタは何故自分が ここにいるのかをまだ理解できていないようだった。ルイズと親しいと いう理由でエレオノールの学院滞在中専任メイドとして勤め上げ、 そのままラ・ヴァリエール家の侍女として連れてこられたのだから、 無理もないと言えるのだが…… 「旅ってわくわくしますね!」 馬車の中。小さな座席に並んで座るふがくとシエスタ。ふがくの手には デルフリンガーがある。だが、シエスタのその元気いっぱいの言葉は、 ふがくには現実逃避にしか聞こえなかった。 シエスタの格好は草色のワンピースに編み上げのブーツ。そして小さな 麦わら帽子といった、ちょっとしたよそ行きの格好だ。ふがくはいつもの 縦の絶対領域を見せつける和装。翼の分だけ狭いのだが、シエスタは そんなことを気にせず……というか、止まってしまうと壊れてしまう 人形のようにはしゃぎ続けていた。 「……なあ、相棒……」 そんな様子を見たデルフリンガーがふがくに話しかける。この馬車で 話ができるのは、ふがくとシエスタ、それにデルフだけだ。 御者はなんでもゴーレムらしい。人形のような若い男のその瞳はガラス玉の ような光を放ち、一言も言葉を発しない。エレオノールがルイズを待っている 間に呼び寄せたとのことだった。 「……まぁ、分からないでもないけどね。事情が事情だし」 そう言ってふがくは小さく溜息をつく。 シエスタのまじめな仕事ぶりはエレオノールにも気に入られたらしく、 単なる道中の世話という名目のお飾りではなく自分のメイドとして雇おうと したらしいが……そこをルイズが自分のものだと言ったのが、この状況に 拍車をかけていた。学院で奉公していたはずが気がつけば大貴族のお抱えに なっているとは、シエスタでなくともなかなか現実を認識しにくいだろう。 そのあたりのことについては戻ってからオールド・オスマンとちゃんと 話をすることになったのだが、シエスタがルイズと親しくなったのも、 元はといえば自分との関わりだということで、ふがくも内心穏やかでは なかった。 そんな二人の気持ちを知ってか知らずか。ふがくたちの乗る馬車の 後ろを走る、二頭立ての立派なブルームスタイルの馬車の中で、ルイズは 針の筵に座っている心地でいた。 「……つまり、姫殿下のお願いについては、何も言えないということね?」 エレオノールは眼鏡のフレームをくいっと上げた。ルイズはわき上がる 恐怖にあらがいつつ、小さく「はい」と答えるのが精一杯だった。 エレオノールはふがくの速度や航続距離を知らない。 だからオールド・オスマンから魔法学院から王都トリスタニアまで 数分で飛ぶと聞かされても、ハルケギニアで一番速い風竜の速度程度にしか 考えていなかった。また、オスマン本人も、エレオノールにルイズたちが アルビオンに向かったことは話していなかった。だから、せいぜいどこかの 山にでも咲いている珍しい花でも取りに行かせたのだろうと、自分の尺度に 基づいた想像しかできなかった。優秀であるが故に嵌ってしまった陥穽だった。 「まあ、それについてはとりあえずいいでしょう。グラモン家の人間と 一緒にいたことを含め、父さまや母さまには聞かれるでしょうから。 それよりも……あなたが得意な系統に目覚めたというのは本当なの?」 エレオノールの視線に疑念と喜びが入り交じる。ルイズも自分が『虚無』に 目覚めたとは言えない。だが、帰郷準備の途中何の気なしに使った 『アンロック』が正しく効果を現したことは、何よりルイズ本人を驚かせた。 だから、ルイズはアルビオンのことを隠すため、嘘をつくことにしたのだった。 こくりと、ルイズは頷く。そう、ウェールズ皇太子の言葉通り、ルイズは アンリエッタ姫にも、そして家族にも唇をかんででも嘘をつくことにしたのだ。 「それで、四系統のどれかしら?」 「……風、です。姉さま」 エレオノールはしばらくルイズの顔を見つめ……そして得心したように 小さく安堵の溜息をつく。 「母さまと同じ系統ね。まあ、あんな使い魔を呼んだのだから、そうじゃ ないかと思ったけれど」 異国の、『ハガネノオトメ』とかいう鋼の翼持つガーゴイルを召喚した妹。 その力は未知数だが、ハルケギニアの技術体系とは異なる技術で作成された それは、エレオノールにはある種の禁忌に触れているようにも思えた。 人間の、少女を器に使ったガーゴイルなど、ハルケギニアには存在しないからだ。 それでも、空を飛ぶ使い魔を得た以上、ルイズの言葉を疑う余地はなかった。 その頃。魔法学院では―― 「……これは……」 火の塔の隣にある自分の研究室で、コルベールはうなっていた。 ルイズが帰郷の準備をしている間に、ふがくがこの研究室を訪ねてきたのは 彼にとっても予想外だった。だが、彼女の用件を聞いて、コルベールは 思わず目を見開いた。 アルビオン空軍技術廠の遺産が収められた大きな木箱。王党派が貴族派に 渡すことなく持ち去ったそれらは、ハルケギニアでも最先端の『科学』技術を 余すことなく彼に語りかける。自分が発明していたおもちゃの域を出ないものを さらに発展させ、『蒸気機関』として軍艦に搭載してしまっていたとは、 コルベールの想像の埒外だった。だが、同時にそれらは自分のしていたことの 正しさと過ちを証明するものでもある。 「……やはり、『火』は破壊にしか用いられないのか……」 そうつぶやいて肩を落とすコルベール。しかし、そのとき彼の脳裏に ふがくの言葉が浮かぶ。 ――それをどう使うかは、アンタに任せるわ。けど、変なことには使わないって確信してるから。 コルベールはもう一度図面に目を落とす。そこで不自然なことに気づいた。 この戦列艦『イーグル』号、戦艦『ライオン』号、竜母艦『ヒューリアス』号と いう三隻の軍艦の図面から、主砲から対人用小口径砲まで、艦載砲に関する 資料だけがすっぽりと抜け落ちているのだ。それは先に王宮でアンリエッタ姫と マザリーニ枢機卿にこれを見せたときに抜き取られたのだが、それを裏付けるように、 一枚の紙が挟まれていた。 「……これは……?ふふっ。ふがく君は、もう少しこの国の文字を勉強するべきかな」 それはふがくの書いたメモだった。彼女の人柄を表すような流麗な 文字だったのだが、所々に綴り間違いがある。コルベールはそれを ほほえましく読み始める。 「『武器はなし。でも参考になるものが届くから待ってて』……ですか。 はて、『参考になるもの』とはいったい……?」 首をかしげるコルベール。そんな彼の元に『イーグル』号の長官艇が 竜籠に載せられて厳重に梱包されて届くのは、明くる日のこと。長官艇が 届けられてから、コルベールはある一時を除き、授業など必要最低限以外 研究室にこもることになる。あるときは長官艇をいじり、あるときは 机に向かい製図用紙にペンを走らせながら、彼は自分の夢に橋を架けて くれた乙女に感謝した―― ルイズたちが王宮でアンリエッタ姫にアルビオンからの帰還を報告した翌日。 銃士隊隊長アニエス・シュヴァリエ・ド・ミランと、副長のミシェルは 港町ラ・ロシェールにいた。 石畳にロングブーツの靴音を響かせ、一般隊員とは異なりところどころ 板金で保護された鎖帷子に身を包み、百合の紋章が描かれたサーコートを 羽織ったアニエスと、サーコートが白無地であること以外アニエスと 同じ出立ちのミシェル。アニエスとミシェルがそれぞれ第1小隊と第2小隊の 小隊長も兼任する、銃士隊全体で7つの小隊の小隊長以上が鎖帷子を身につけ、 一般隊員が布鎧なのは、体力的な問題以上に、戦術として先頭に立つ 小隊長以上には純粋に防御力が要求されていたため。そして二人の腰に 下げられているのは、メイジの証の杖ではなく細く長い剣であり、腰の 後ろには最新型の火打ち石式短銃がいつでも撃てるよう準備されていた。 「すまんな。ミシェル。タルブから戻ったばかりだというのに」 短く切った金髪の下、澄み切った青い目がわずかに下がる。強行軍で ラ・ロシェールに来たにもかかわらず、その表情に疲れは見えない。 「かまいませんよ。そのおかげで私の第2小隊は休暇を取れたんですから。 みんな喜んでましたよ。……ん?あれは……?」 短く切った青い髪に青い瞳のミシェルは、そう言うと視線の先、 目的地である世界樹桟橋の入り口に立つ銃士姿の4人組に目を向ける。 全員一般隊員と同じ布鎧だが、先頭に立つ金髪を少年のように切った まだ少女のような雰囲気の女だけは鎖帷子を身につけないときに羽織る 小隊長用の白いマントを身につけている。後ろの三人はといえば…… 一言で言えば奇異。 黄色い派手な鎧下に銃士隊では禁じられているはずの緑の長髪に傾いた ような動物の耳がついた耳当てをつけた者、自分と似た、ある種銃士隊には 似合わぬ雰囲気をまとった者、そして同じくこの場に似つかわしくない 雰囲気をまとう青く長い髪の者。この4人を見たとたん、アニエスが 顔を渋くする。 「ども。お疲れ様です。姫殿下から連絡はいただいてます」 近づく自分たちに、小隊長風の女が前に出て明るく声をかけてくる。 アルビオン訛りのあるその声に、アニエスは疲れを隠さない声で応えた。 「……まさかお前がいるとはな。シン。いつアルビオンから戻ってきた? 後ろの三人は……聞くまでもないな」 「まぁ、そんなところで。ボクは昨日あの『マリー・ガラント』号で 戻りました。報告書はもう姫殿下に送ってますけど、写しをご覧になります?」 「ああ。見せてもらおう。お前がここにいるということは……アルビオンの 内乱は終結した、ということか」 アニエスの言葉にシンは無言で頷く。どちらが勝利したのかなど、 聞くまでもない。 「ところで、姫殿下が言っていた『荷物』というのは……あれか?」 アニエスはシンが指さした『マリー・ガラント』号の甲板に布を かけられたまま厳重にロープで固定された大きなものを見る。形から すると小型のフネのようだが、破損しているのかマストがない。 「はい。それから……」 「救助した方々については心配いらん。アストン伯が受け入れを快諾 して下さった。順番にタルブにあるアストン伯の別城にご案内する」 アニエスのその言葉にシンは胸をなで下ろし、アルビオン王党派の 生き残りにその旨伝えるべく三人を連れて桟橋を上っていく。その後ろを ゆっくりと追いかけるように歩き出すアニエス。シンたちが十分に 離れたのを見計らって、ミシェルがアニエスに尋ねた。 「隊長。彼女たちは何者です?銃士隊の格好はしていましたが……」 「ああ、そういえばミシェルはまだ配属されて半年だったな。 シンは我が銃士隊第8小隊の小隊長だ。アルビオン内乱の動静を探るため、 特命でしばらくアルビオンに派遣されていたのだが……きちんと顔合わせを しておくべきだったか」 「まあ、それは後でもできますし。ですが、第8?銃士隊は全部で7小隊では?」 驚くミシェル。アニエスはミシェルに顔を近づけると、誰にも 聞こえないように耳打ちする。 「第8小隊は独立遊撃小隊だ。私の指揮下ではあるが、姫殿下の直率とも言える。 実際、私も第8小隊全員の顔は知らん。後ろの三人で私が知っているのは あの傾いた耳当てをつけた副官のハーマンだけだ。 小隊長のシンはあの調子で新兵訓練などにひょっこり顔を出すがな」 「そんな小隊が……知りませんでした」 ミシェルは内心の動揺を必死に隠し、言葉を絞り出す。そんなミシェルに だめ押しのナイフを突きつけたのは、アニエスのこの言葉だった。 「ああ、一つ教えておこう。第8小隊の別名は『脱走者殺し』(ヒュージティブ・トュエス)。 先日も一人挙動不審で内偵を入れていた銃士が奇妙な死に方をしたのを 覚えているだろう?つまり、銃士隊の中でもそういう任務も受け持つ連中だ」 アニエスはシンたちの本当の顔は知らない。そして、ミシェルには そのとき今は亡き先王とタルブ領主アストン伯などごく一部の者しか 知らないはずの新型長銃が自分の枕元に置かれていたことまでは 話さなかった。 だが、選り抜きとして将来を嘱望されていたその不幸な銃士が野良猫を 見たとたんに絶叫してショック死する現場に居合わせたミシェルは、 横にアニエスがいることも忘れて思わず息をのんだ。 そして、アニエスたちがそのような話をしている頃。先を行くシンたちもまた、 ちらりとミシェルに視線を向けた後、小声でハーマンがシンに話しかける。 「……予想できたとはいえ、隊長だけじゃなくてアイツまで来るとはねぇ」 「うん。そうなんだけど……まだ裏が取り切れてないんだ。 ハーマンさんの方が詳しいと思うけど」 「だから……その『ハーマンさん』っての、やめないかい? あんたが小隊長なんだし」 ハーマンの声がどっと疲れを帯びる。だが当人であるシンは困ったように 言った。 「うーん。みんなボクより年上だし……。 それにハーマンさんはハーマンさんだから」 「あーわかった。もういい。好きに呼んでおくれよ……。 ま、あたしが、というかほとんどシーナが調べたところだけど、 表向き枢機卿の差し金で銃士隊副長に任命されてるけど、裏で高等法院長と つながってる没落貴族ってとこだね。つまり平民装ってるけどメイジだよ」 半分だけとはいえ獣人であるハーマンも、吸血鬼であるシーナも、二人とも 系統魔法以外の禁忌に属する魔法を使うことができる。その能力を駆使して トリステイン王国に深く食い込んだ『レコン・キスタ』やガリアなどの 勢力を洗い出し、時には排除することを主な任務としていた。 「うーん。リッシュモン高等法院長かぁ。 確かに一番疑わしいんだけど……まだしっぽがつかめないんだよね。 ワルド子爵みたいな方法で連絡は取っていないようだし……。 本当にやっかいだなぁ。これ。隊長とも関連あるし……。 どっちにしてもボクたちの任務が終わるまでは他の人に任せるしかないけど」 歩きながら首をかしげるシン。そこにカルナーサが小声で声をかけた。 「ところでさ、シン。王党派の後始末が終わった後で、アタシら何するわけ?」 アンリエッタ姫の命令では単にラ・ロシェールでシンと合流しろとしか 言われていなかったための言葉だが、シンはあっさりと答えた。 「あれ?言ってなかったっけ?『マリー・ガラント』号が出港可能に なったら、もう一度アルビオンへ行くよ」 しかし、シンのその言葉が実現されるまで、三日の時間を必要とした。 理由はアルビオン王党派の生き残りを馬車で移送する際に目立たない 深夜に行ったためであり、同時にシンたちにも準備が必要だからであった。 前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略)
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前ページ次ページ虚無のパズル 大きな風竜に跨がったワルドは、薄い笑みを浮かべながら、蹂躙されたかつての祖国を見渡した。 上陸前のつゆ払いのため、ワルドはタルブの村と、その見事な小麦畑に容赦なく火をかけた。 焼け野原となったタルブの草原には、三色の『レコン・キスタ』の旗を掲げたアルビオン軍が展開している。 その数はおよそ三千。上空に大艦隊の支援を持つ、まさに鉄壁の布陣である。 ワルドの元に、偵察から戻った竜騎士が近付いた。 「申し上げます!トリステイン軍はラ・ロシェールの町に到着!拠点とし、兵の展開を進めているもよう!」 「数は?」 「およそ二千!」 「なるほど、それが緊急に配備できる限界ということか」 そばに控えた、別の竜騎士がワルドに進言する。 「子爵殿。村の連中は森の中に逃れたようですが、いかがします。森に火を放ちますか」 「よい、捨ておけ。奴らは餌だ」 「餌、ですか?」 ワルドはにやりと凶暴な笑みを浮かべた。 「そうとも。殺してしまっては、いまだ戦の準備の整わぬトリステインの軍勢を、ここまで誘き寄せることはできんだろう?」 タルブの村の南に位置する森。 村を焼き出された村人たちは、森の中に身を隠していた。 「コルベール先生!」 コルベールは、その声に振り返った。 「ティトォくん!無事だったのか」 息を切らせながらこちらに走ってくるのは、朝から姿の見えなかったティトォと、それを探しにいったシエスタであった。 シエスタは倒れている母の姿を見ると、青くなって駆け寄った。 「お母さん!」 「落ち着きなさい、シエスタ。母さんは気絶しているだけだよ」 シエスタを落ち着かせるように、父が肩を軽く叩いた。 シエスタは泣きそうな声になって、父親の腕を取った。 「お父さんも、火傷してるじゃない……、大丈夫なの?」 「こんなのは、大したこたあない。だが、ひどい火傷を負った奴もいる。連中、村に火をかけたんだ。なんとか村のものは全員逃げ出すことができたんだが、治療の薬が全然足りないんだ」 あちこちから、アルビオン軍の襲撃でけがを負った村人たちのうめき声が聞こえる。 火竜のブレスによって焼き出された村人たちは、多くの人が火傷を負っていた。 「ひどい……」 シエスタは、思わず口を抑えた。 骨折などの外傷は、村の医者の応急処置である程度なんとかなったが、火傷はそうも行かない。 こんな森の中では治療に必要な油薬を用意することなどできないので、火傷を負った人たちは、痛みにうめいていた。 見ると、コルベールが重症のものを優先して、『水』の治癒魔法をかけていた。 突然、コルベールの身体がふらりとなったので、ティトォはあわてて駆け寄った。 「コルベール先生!大丈夫ですか?」 「おお、すまない……、いや、私は『火』の系統のメイジ、治療の『水』魔法は本領ではないのだ」 『水』はコルベールの得意とする系統ではないので、コルベールの精神力を大きく削っているのだった。 「しかし、だからと言って黙って見ているわけにもいくまい」 コルベールは額の汗を拭うと、身体を起こそうとする。その身体を、ティトォが抑えた。 「待って。ぼくも手伝います、先生は少し休んでいてください」 「しかし……」 「大丈夫、ぼくも魔法使いです」 「なんだって?」 コルベールは驚いて、目をぱちくりさせた。ティトォとは三週間のあいだ、共同で研究を進めていたが、その間にティトォが魔法を使ったことはなかったので、彼のことは平民だと思っていたのだった。 ティトォは懐から小さな装置を取り出した。コルベールはそれが、以前見せてもらった『ライター』という着火装置であることに気が付いた。 考えてみれば彼の妹だという、あの小さな女の子……、アクアは、強力な爆発を操る、おそらくは『火』のメイジであった。 「ティトォくん、きみも『火』の……?」 ティトォはライターの回転ヤスリを擦って、火を付けた。ライターから勢いよく火柱が立ち上がった。 炎はみるみるうちにその色を変え、白く輝きはじめた。 「マテリアル・パズル……、炎の力よ、変換せよ!」 全身にひどい火傷を負った村の若者に、ティトォはその炎を叩き込んだ。 炎はまたたく間に若者の全身に広がり、勢いよく燃え上がった。 「きゃあ!ティトォさん!」 シエスタはあまりのことに、気絶してしまった。 村人たちもあわてて騒ぎ出す。 「ああ、なんてこと!誰か、水持ってこい、水!早く火を消さないと!」 「お前!いったいなにをするんだ!」 村人の一人が、乱暴にティトォの胸ぐらを掴んだ。 しかし、すぐに村人たちの顔は、恐怖から驚きへと変わっていった。 なんと、その白い炎に包まれた若者の身体から、傷が消えていったのだ。 醜く爛れた身体は、みるみるうちに血色を取り戻し、細かな傷も塞がっている。 ティトォを掴み上げていた村人の腕から力が抜け、解放されたティトォは尻餅をついた。 「げほ!げほげほ!」 「こ、これは、いったい……?」 コルベールは、驚きのあまりぽかんと口を開けていた。 古来より、傷を癒すのは、人の体に流れる水を操る『水』の系統の魔法なのである。 『火』の系統が傷を癒すなど、常識では、ありえない。魔法の法則から、大きく逸脱している。 それなのに、ティトォは秘薬の助けもなしに、『火』の力で、これほど強力な治癒の魔法を使ってみせた。 「……これが、ぼくの魔法。炎の魔力を変換し、傷を治す癒しの力にする。けが人をここに集めてください。ぼくが全員、治します」 「あ、ああ!わかった!おおい!おおい!怪我をしているものはこっちに集まれ!治療術を使える貴族がいらっしゃるぞ!」 シエスタの父は、気絶した母とシエスタを子供たちに任せて、村人たちに声をかけた。 足を怪我した者を運ぶのを手伝いながら、コルベールは目を輝かせてティトォを見ていた。 見つけた。 見つけたぞ。 きみこそ、私の……! トリステイン魔法学院に、アルビオンの宣戦布告の報が入ったのは、翌朝のことだった。 王宮は混乱を極めたため、連絡が遅れたのであった。 ルイズは魔法学院の玄関先で、王宮からの馬車を待っているところであった。 その身は、儀礼用の巫女服に包まれている。なにも今から着付けしていく必要はないのだが、気分というやつであった。 しかし、やってきたのは馬車ではなく、一騎の竜騎兵であった。 王宮からの使者であるという竜騎士の少年は、オスマン氏の居室をルイズに尋ねると、息せき切って駆け出していった。 「今の、ルネじゃないの」 使者としてやってきた少年は、いつかの日に『竜籠』を操ってルイズとオスマン氏を王宮まで送った、あの竜騎士見習いの少年・ルネであった。 ルイズは、ルネの尋常ならざるようすに胸騒ぎを覚え、こっそりと後を追った。 「宣戦布告とな?戦争かね?」 式に出席するための準備をしていたオスマン氏は、飛び込んできた使者の少年の言葉に、顔色を変えた。 「いかにも!アルビオンの宣戦布告を受け、姫殿下の式は無期延期となりました!王軍は、現在ラ・ロシェールに展開中!したがって学院におかれましては、安全のため、生徒および教員の禁足令を願います!」 「アルビオン軍は、強大だろうて」 使者の少年、ルネは、悲しげな声で言った。 「敵軍は、旗艦『レキシントン』号を筆頭に、戦列艦は十数隻。さらに、三千と見積もられる敵兵力が、タルブの草原に陣を張り、ラ・ロシェールに展開した我が軍と睨み合いを続けております。 しかし、我が軍の艦隊主力は既に全滅……、完全に敵に頭を抑えられてしまったのです。かき集めた兵力も、わずか二千にすぎません。敵軍は空から砲撃をくわえ、難なく我が軍を蹴散らすでしょう」 「現在の戦況は?」 「敵の竜騎兵によって、タルブの村は炎で焼かれているそうです……。同盟に基づき、ゲルマニアへ軍の派遣を要請しましたが、先陣が到着するのは三週間後とか……」 オスマン氏はため息をついて言った。 「……見捨てる気じゃな。三週間の間、アルビオン軍を食い止めることはできまい。艦隊がやられた時点で、すでに勝敗は見えておる」 「ああ、そんな……、それでは、指揮を執られている姫殿下も……」 ルネは打ちひしがれるように、膝を付いた。オスマン氏はルネの言葉に、驚いて尋ねた。 「なんと言ったね、きみ。まさか、姫殿下おん自ら前線に……?」 「そうなのです。不毛な対策会議を続ける宮廷貴族たちに発破をかけるように、姫殿下おん自ら兵を率い、タルブへ向かったのです」 「おお、なんということじゃ……」 これにはさすがのオスマン氏も驚いたようすであった。 オスマン氏は、椅子に深く腰かけると、右手で顔を覆った。 教員室の扉に張り付き、聞き耳を立てていたルイズは、戦争と聞いて蒼白になった。 そして、タルブと聞いて顔色が変わった。シエスタの村じゃないの。 さらに、アンリエッタが戦地に向かったと聞いて、卒倒しそうになった。姫さまが、戦に? たまらなくなって、ルイズは駆け出した。 走って、走って、学院の正門に辿り着いたとき、ふと我に返った。 わたし、今、なにをしようとしたの? 決まっている。タルブに向かおうとして、走り出したのだ。 姫さまを助けないと。シエスタを救けないと。 でも、ダメよ、ルイズ。あんたになにができるっていうの。 戦争なのよ。 相手は、空に浮かんだ巨大な戦艦。 『ゼロ』のあんたが行ったって、どうすることもできないわ…… ルイズはきゅっと唇を噛み締めて、ゆっくりときびすを返した。 学院の寮の、自分の部屋に向かって歩き出す。 そうよ、禁足令が出ているんだから……、部屋に戻らないと…… 『待つのだ、ルイズよ』 「──誰!」 突然何者かに呼び止められ、ルイズは振り返った。 『いいのか?このまま引き返してしまって。もう二度と、友に会うことはできなくなってしまうのだぞ』 「誰よあんた!どこにいるのッ!」 ルイズは辺りを見回したが、朝もやの中に、それらしい人影は見えない。 『今すぐ、友の元へ向かうのだ』 「向かえって……、無理よ、戦争してるのよ。魔法が使えないわたしなんかがいたって、邪魔なだけよ……、足手まといになるだけだわ……」 『それでも向かうのだ。邪魔であろうが、足手まといであろうが、危機に陥っているのであれば手を差し伸べなければならない、それが友というものだ。ここで逃げることは、友から、そして自分から逃げることだぞルイズ』 ルイズはハッとして、自分の右手を見つめた。その手には、メイジの命ともいえる杖が握られている。 そうだ、わたしは、魔法は使えないけれど…… ルイズは杖を振るい、早口に呪文を唱えた。 「ウル・カーノ……」 突然、魔法学院の正門近くで爆発が巻き起こった。門の外に控えていたルネの風竜は、驚いて威嚇の鳴き声を上げた。 「ジエーラ!」 先ほどより巨大な爆発が起こり、魔法学院の正門はガラガラと音を立てて崩れた。 「ジュラ・イル・ゲーボ!」 さらに連続して爆発が巻き起こり、崩れ落ちる瓦礫をすべて、さらに細かく砕いた。 ぱらぱらと小石ほどの大きさになった瓦礫が、正門前に降り積もった。 ルイズは深呼吸して、きっと前を見据えた。 そうだ、わたしには、この爆発がある……、昔だったら、これはあらぬところを爆発させるだけの、失敗の証でしかなかった。 でも、今なら。ティトォの魔法で、爆発をコントロールできるようになった今なら、これは立派な武器になるわ!半端な『火』の呪文なんかより、よっぽど強力な、わたしの力よ! 「うわ!なんだこりゃ!」 素っ頓狂な声に、ルイズは振り向いた。粉々に砕かれた門を見て驚いているのは、学院長室から戻ったルネであった。 「ちょうどよかったわ。あなた、わたしをタルブに連れていきなさい」 「み、巫女様?」 ルネはルイズの服装、式典用の巫女服姿を見て、怪訝な声を上げた。 「って、きみは。いつかの日に、オスマン氏と一緒に王宮へ送り届けた子じゃないか。なに言ってるんだよ。だめだよ、そんなこと。ぼくはまだ見習いだし、きみは学生じゃないか!」 ルイズが杖を振るうと、近くの地面が爆発した。土ぼこりが舞い上がり、ルネは目を丸くした。 「わたしはトライアングルクラスの『火』メイジよ」 ルイズは嘘をついた。ルネを納得させるには、得体の知れない爆発よりも、こっちのほうが通りがいいと思ったからだった。 「必ず姫殿下のお力になれるわ。連れていって」 「し、しかしだね。学院には禁足令が出ているんだよ」 ルネはそれを伝えに、こうして使者としてやってきているのである。 ルイズは懐から、一枚の書簡を取り出してルネの鼻先に突きつけた。 「……ひ、姫殿下の許可証?」 「わたしは姫殿下直属の女官です。姫殿下の御身の危機には、駆けつける義務があるわ!」 それを見て、ようやくルネの決心も付いたようであった。 「うむ……、そうだ、そのとおり!今は危急のとき!見習いだろうが、関係ない!トリステインの危機に駆けつけずして、どうして未来の竜騎士隊を名乗れようか!」 ルネはふとっちょの身体からは信じられないくらい身軽な動きで、風竜の背中に跨がった。 「よし行くぞ、目指すはタルブの村!きみも早く乗って!」 ルイズが風竜の背中によじ上ると、ルネは手綱を打ち、風竜を羽ばたかせた。 ルイズはすごいスピードで飛ぶ竜の背中の上で、ポケットを探り、アンりエッタからもらった『水のルビー』を指にはめた。 その指を、祈るように握りしめる。 姫さま……、どうか無事でいて。 それから、シエスタも……。わたしによくしてくれる、笑顔がすてきなシエスタ。どうか、無事でいて……。 ……そういえばティトォもいるはずなんだっけ。ついでに、無事でいて……。 それから、懐に忍ばせた『始祖の祈祷書』に手を伸ばした。 伝統に倣い、肌身離さず身に持っていたのである。 ルビーを嵌めた右手で、『始祖の祈祷書』をそっと撫でる。 「始祖ブリミルよ……、どうぞ我らをお守り下さい」 その瞬間、『水のルビー』と『始祖の祈祷書』がぼんやりと光りだした。 しかし、『始祖の祈祷書』は懐に入れていたため、ルイズはそのことには気付かなかった。 タルブの村の火災はおさまっていたが、そこは無惨な戦場へと変わり果てていた。草原には大部隊が集結し、港町ラ・ロシェールに立てこもったトリステイン軍との結線の火蓋が切って落とされるのを待ち構えていた。 空には、部隊を上から守るため、『レキシントン』号から発艦したアルビオンの竜騎士隊が飛び交っている。散発的にトリステイン軍の竜騎士隊が攻撃をかけてきたが、いずれもなんなく撃退に成功していた。 決戦に先立ち、トリステイン軍に対し艦砲射撃が実施されることになっていた。 そのため『レキシントン』号を中心としたアルビオン艦隊はタルブの草原の上空で、砲撃の準備を進めていた。 タルブの村の上空を警戒していた竜騎士隊の一人が、自分の上空、千五百メイルほどの一点に、近付く一騎の竜騎兵を見つけた。 竜に跨がった騎士は竜を鳴かせて、味方に敵の接近を告げた。 ルイズは風竜から身を乗り出して、眼下のタルブの村を見つめた。 素朴で美しかったであろう村の姿はもはやどこにもなく、家々は醜く焼けこげ、ドス黒い煙が立ちのぼっている。 広大な小麦畑はすっかり焼け野原となり、アルビオンの兵隊たちが陣を張っていた。 シエスタが帰省した日、門の前ではち会わせた時の会話が、ルイズの脳裏に甦った。 『タルブの村は、小麦の名産地なんですよ。一面に小麦畑が広がって、とっても綺麗なんです。ミス・ヴァリエールにも、ぜひお見せしたいなあ』 アルビオン軍はゆっくりと行進していく。焼け残った稲穂が、兵隊たちに踏みにじられた。 ルイズは唇を噛んだ。血の味が滲む。 こちらに気付いた一騎の竜騎士が、上昇してくるのが見えた。 「叩き落としてやる」 低く唸り、自分の身体と、風竜の身体とをロープできつく結びつけた。 「ルネ!突っ込んで!作戦は分かってるわね!」 「ああ、バッチリだ!しかし、本当にやれるのかい?」 「わたしは姫殿下直属の女官で、巫女で、トライアングルメイジよ!信じなさいッ!」 「了解だ、巫女さま!始祖ブリミルよ、我らに勝利のお導きを!」 ルネの叫びとともに、二人を乗せた風竜が急降下を開始した。 「一騎とは、舐められたものだな」 急降下してくる竜騎兵を迎え撃つため、竜を上昇させた騎士が呟く。 しかもよく見れば、あれは風竜である。 アルビオン竜騎兵の主戦力である火竜に比べ、風竜はブレスの威力で大きく劣る。戦向きの竜ではない。 竜騎士は、急降下してくる風竜の竜騎兵を待ち受けた。 さすが風竜だけあって、早い。 だが、アルビオンに生息する『火竜』のブレスの一撃を食らったら、風竜など一瞬で羽を焼かれ、地面に叩き付けられるだろう。 じりじりと急接近する敵を引きつける。間もなくこちらのブレスの射程に入る。 まだ、 まだ、 まだ……、 今だ! ブレスを吐くために、火竜が口を開けた。 その瞬間、目の前の空間が爆発した。 「なッ!」 火竜は驚き、バランスを崩す。次の瞬間、またしても爆発が巻き起こり、羽を傷付けられた火竜は真っ逆さまに墜落した。 「やったぞ!」 「はしゃがないで!三騎、右下から来るわ!」 ルイズの言葉どおり、三騎が横に広がって上がってくる。 三騎の火竜は、ぼんぼんと炎のブレスを吐きかけた。ルネはすかさず風竜を操り、垂直に急降下する軌道を水平にした。 「うぐ……!」 急な機動の変化にルイズは振り落とされそうになったが、身体に結んだロープがルイズを支えた。 ごうと音を立てて、ルイズのすぐそばを火竜のブレスがかすめる。 「がんばれ、ベルヴュー。当たるなよ」 ルネは相棒の風竜の背中を、優しくぽんと叩いた。 風竜は大きく羽ばたき、加速した。背後から吐きかけられるブレスを避けながら、火竜の騎兵隊を引き離していく。 アルビオンの竜騎兵は、チッと舌打ちをした。風竜はブレスの威力で火竜に劣るが、スピードで勝るのである。 風竜は旋回して、ふたたび突撃してくる。すかさずブレスを放ったが、右へ左へと巧みに避けた。 「ええい!ちょこまかと……」 それ以上言うより先に、竜騎士の後ろの空間が爆発した。 爆風に押されて火竜はつんのめるようになり、背中に乗っていた竜騎士は振り落とされて、ぎゃあああああ……という長い悲鳴を残して、地面に落ちていった。 ルイズたちの作戦はいたってシンプルだ。 ルネが風竜で、魔法の射程ぎりぎりをひたすら逃げ回り、ルイズが爆発の魔法で攻撃する。それだけである。 しかし、この急ごしらえの作戦は、戦闘開始早々に二騎の竜騎士を落とすという大戦果をあげた。 なにしろルイズの爆発魔法は、狙った場所を直接爆発させることができるのである。 『ファイヤーボール』の呪文のように火の玉を飛ばすわけではないので、魔法の軌道を見切ることはできない。 魔法を使うルイズ本人以外には、どこが爆発するか分からないという、恐ろしい攻撃なのであった。 「すごい!すごいよルイズ!天下無双と謳われたアルビオンの竜騎士を、二騎も撃墜したんだ!きみはまさしく戦巫女様……、いや、聖女様だ!」 ルネは興奮して叫んだ。見習いの自分が立てたとんでもない手柄に、舞い上がっているのだ。 しかしルイズはそれどころではなかった。次々吐きかけられるブレスを、右に、左に、宙返りで避ける風竜の機動に、乗り物酔いを起こしかけているのだった。 「うぶ……、あんまり叫ばないで。気持ち悪くなってきちゃった……」 「うわ!やめてくれよ、こんなとこで吐かれたらたまらないよ!いや、待てよ。聖女様の体から出されるものならば、それは聖水のようなものじゃないだろうか?するとぼくは,きみのをこの身に受け止めるべきなのだろうか?ううむ……」 ルネがなんだかろくでもないことを言い出したので、ルイズはますます気分が悪くなった。 しかし、ルイズはぶんぶんと頭を振って、なんとか酔いを振り払った。 右から十ばかりの竜騎士が、こちらにめがけて飛んでくる。 ぶおおッ!と、火竜のブレスが飛んできた。風竜は左にかわす。 「ルネ、もう少し近付いて!魔法の射程圏外よ!」 「十騎の中に突っ込むのは無理だ!引き離しながら、各個撃破を狙おう!」 ルネが手綱を操ると、風竜はぐんと加速した。 ばきばきばき!と木の枝を折って、森の中に竜騎士が墜落してきた。 森に隠れている村人たちは、びくっと身をすくませた。 落ちてきた竜騎士は、死んではいないようだが、全身を強く打って身動きが取れないようだった。 村人たちは、おそるおそる空を見上げる。アルビオンの竜騎士隊と、一騎の竜騎士が飛び回りながら戦っている。 「王軍の騎士様かい?」 「しかし、一騎だけってのもおかしな話じゃないか」 そうして見守っていると、またしても味方の竜騎士が、敵を一騎落とすのが見えた。 おおお!と歓声が上がる。村を燃やした侵略者が、次々撃ち落とされている! 村人たちはその竜騎士の活躍に熱狂した。 そんな喧噪の中、ティトォは怪我人の治療を続けていた。 ほとんど休まずに魔法を使い続けているティトォは、傍目にも消耗して見えた。 目を覚ましたシエスタが、心配そうにティトォを見つめている。 ティトォは額に浮いた大粒の汗をぐいと拭うと、目の端で空の戦いを見た。 「ルイズ……、来たのか……、ほんとに、無茶するな……」 ティトォは誰にも聞こえないほどの声で、ぽつりと呟いた。 50人目の治療を終え、ティトォは声を上げた。 「次の怪我人を、こっちへ……」 しかし、足下がふらりとなって、ティトォはよろめいた。その身体をコルベールが受け止める。 「無茶だ、少し休みたまえ。このままではきみが潰れてしまう」 「でも……」 「大丈夫だ、きみのおかげで、あとは軽傷のものばかりだ」 それを聞くと、ティトォは少し安心したような表情を浮かべた。 「本当ですか、それなら、少し……」 その瞬間、ティトォの心臓が、ずぐんと跳ねた。 ティトォは胸を抑えるとうずくまり、ごぼりと大量の血を吐いた。 足下の草花が、ティトォの血で真っ赤に染まる。 「きゃあああああッ!」 シエスタが悲鳴を上げた。村人たちも動揺し、ティトォの元に集まってきた。 「ティトォ君!」 コルベールが蒼白になる。 ティトォは荒い呼吸を繰り返し、焦点の合わない目で、地面に倒れるように横たわった。 とうとう、来ちゃったか。肉体の限界が…… ぼくの魔法『ホワイトホワイトフレア』は、生物の肉体強化。 だから、アクアやプリセラと違って、こうなることはまずないはずだけど……、 アルビオンへの密命や、宝探しの冒険旅行、それにタルブ村の怪我人の治療。魔力を使いすぎたか…… 「ティトォ君、しっかりしたまえ!」 どんどん呼吸が浅くなっていくティトォの姿に、コルベールは取り乱した。 「ああ、そんな。鼓動が弱くなっていく……、だめだ、死なないでくれ。死んではだめだ。きみは、私の夢なんだ……」 コルベールは、横たわるティトォにすがりついた。 「きみは、『火』の魔法で、傷を癒した。ここにいる人たちは、きみが救ったんだ。きみのようになりたいんだ、私は。 私の『火』で、誰かの傷を癒したいんだ。魔法を平和のために役立てたいんだ!私は、きみのことがもっと知りたい!きみの魔法が!きみの力が!だから、お願いだ……、お願いだから……、死なないでくれ……」 最後の方は声がかすれて、ほとんど聞き取れないほどだった。 コルベールはまるで祈るように、ティトォの右手を握りしめる。 ティトォは左手で、そっとコルベールの手に触れた。 「大丈夫です……、また、会えますよ」 その言葉は弱々しかったが、穏やかな響きだった。 コルベールは思わず顔を上げ、ティトォを見た。 「ぼくは……、『ぼくたち』は、死んでも魂が入れ替わるだけ……、永遠に、その繰り返し……」 「……なんだって……?」 コルベールは言葉の意味が分からず、困惑した。 ティトォは首を回し、その人形のような瞳でコルベールを見つめた。 「ぼくたちは、先生の思っているような……、立派な人間じゃありません。ぼくたちは、罪人……、確かにぼくの魔法は、癒しの魔法。戦いには向きません。でも……、平和のためじゃない……」 すでにティトォの命は消えかけていた。しかし、ティトォは強い意志を込めて、言い放った。 「ぼくたちは、戦うために魔法の力を身に付けたんだ」 突然、ティトォの身体が光を放ち、膨大な魔力が吹き出した。 「きゃあッ!」 周りで見守っていた、シエスタや村の人々は、吹き荒れる魔力の嵐にあとじさった。 ティトォの身体は、まるでパズルのピースのようにばらばらに崩れ、吹き荒れる魔力に乗って宙を飛び回る。 「これは、いったい……!」 コルベールは光から目を庇いながら、その様子を見守った。 やがて、パズルのピースは一ヶ所に集まり、組み上がって、なにかを形作ってゆく。 ばらばらになったティトォの身体が、『別の何か』になってゆく…… 「なんだと?この短時間で四騎が落とされただと?ばかな!」 艦砲射撃実施のため、タルブの草原の上空三千メイルに遊弋していた『レキシントン』号の後甲板で、艦隊司令官サー・ジョンストンは伝令からの報告に眉をひそめた。 「単騎で四騎を討ち果たしてのけたか。ふむ、英雄ですな」 隣に控えた『レキシントン』号艦長ボーウッドが、感心したように呟く。 「なにを悠長なことを!私がクロムウェル閣下から預かった兵だぞ!たった一騎の敵になにをやっておるのだ!」 伝令は身を縮こまらせながら、報告した。 「て、敵は竜の背に、竜騎士とメイジを乗せているらしいのです。風竜の素早い動きでこちらの攻撃をかわしつつ、メイジが魔法を撃ってくるので、どうしようもなく……」 「二人乗り?馬鹿な、いかに風竜といえど人間を二人乗せて素早く飛ぶことはできまい」 「それが、どうもどちらも鎧を身に着けず、かなりの軽装らしく……、メイジの方はかなり小柄で、しかもおかしなことに、巫女服を纏っているとか」 「巫女装束?」 ジョンストンが頓狂な声を上げる。 「『聖女』を気取るつもりですかな。まさしく英雄ということか。しかし、たがが英雄。所詮は『個人』にすぎませぬ。いかほどの力を持っていようと、個人には、変えられる流れと、変えられぬ流れがあります」 ボーウッドは落ち着き払って答えた。この艦は後者に当てはまる。 「艦隊前進。左砲戦準備」 しばらくすると遥か眼下に、周りを岩山に囲まれたラ・ロシェールの港町に布陣したトリステインの軍勢が見えてきた。 まず、空からの艦砲射撃により軍勢の体勢を崩し、しかる後に『レコン・キスタ』軍の一斉攻撃を開始するのだ。 水兵たちにより、砲戦の準備が進められる中、またも伝令の声が響き渡った。 「竜騎士一騎撃墜!」 またしても自慢の竜騎士を撃墜されたとあって、ジョンストンは顔色を変えた。 ボーウッドはため息をつく。 敵の竜騎士の一騎など、捨ておいても戦局に変化はないだろうが、放っておくのも目障りだ。士気に関わる。 「ワルド子爵」 ボーウッドは呟いた。 『はっ』 ボーウッドの耳に、ワルドの声が響く。 ワルドは艦隊のはるか後方を飛んでいる。声を『風』の魔法で、『レキシントン』号のブリッジまで運んだのである。 「単騎に何を手こずっているのか。遊ばせるために貴官に竜騎士隊を預けたのではないぞ」 『これは手厳しい。しかしご安心召されよ、すぐさま打ち取ってごらんにいれましょう』 ワルドはそう呟くと、はるか眼下の、竜騎士隊と戦っている一騎の風竜を見つめた。 風竜の背中には二人の人影があり、一人は儀礼用の巫女装束を纏っている。 ヘッドピースが風に揺れ、見慣れたルイズの桃色がかったブロンドの髪が覗いた。 ワルドは口の端を吊り上げた。 生きていたか、ルイズ。 ワルドは、騎乗する風竜を急降下させると、声を『風』の魔法に乗せ、残った竜騎士隊に指令を下しはじめた。 前ページ次ページ虚無のパズル
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登録日:2014/12/31 Wed 09 07 57 更新日:2023/12/23 Sat 19 43 09NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 ゼロの使い魔 ゼロ魔 ナーロッパ ハルキゲニアではない ハルゲニアでもない ハルケギニア ファンタジー 中世 国家 架空の国家 異世界 魔法世界 『ゼロの使い魔』の舞台となる異世界である。 たびたび間違われるが、「ハルキゲニア」ではない。それでは古代生物のほうになってしまう。 いわゆる「ファンタジー世界」であり、人間の他にドラゴンやグリフォン、オーク、精霊など地球では伝説上の存在とされる生物が多数存在する。 空には赤と青の2つの月が浮かんでおり、平賀才人はそれを見て異世界に召喚されて来たのだと(ようやく)気付いた。 地形・地名・文化はヨーロッパに酷似しているが、関連性は不明。 文明レベルは中世から近世のヨーロッパ風。 ここでは劇中に登場した国や地方について記述する。 主要5カ国 + トリステイン王国 君主:マリアンヌ王妃(*1)→アンリエッタ王女(後に女王) 物語の主軸となる国家。 主要国の中では一番の小国で、物語の中でも様々な内憂外患に見舞われる。 国内の貴族の質の低さに悩まされていたが、有能な平民の登用などでの改革を進めつつある。 モチーフはおそらく北フランス。 国内の主な施設や地名 トリステイン魔法学院 本編の主な舞台となる場所。 学院長は世界で最も偉大なメイジと称えられるオールド・オスマン。学年は1~3年。全寮制でかなりの郊外にある。 トリスタニア 王国首都。 魔法学院からは馬で3時間ほどの距離にある。 一番の大通りであるブルドンネ街も幅5メートル程度の広さしかないがアニメ版ではかなり広く描かれていた。 タルブ村 シエスタの故郷。竜の羽衣が奉られていた。名産はワイン。 ラ・ロシェール 港町、空中船用なので世界樹の枯木を桟橋に使っている。アルビオンへの玄関口。 ラグドリアン湖 ガリアとの国境線にある湖。水の精霊が住む。 ヴァリエール領 ルイズの出身地。 タングルテール地方 アニエスの故郷。20年前に滅ぼされた。 ド・オルニエール 才人が恩賞としていただいた土地。広さは30アルパン(10キロ四方に相当) 表向きは1万2千エキューの年収があるとされていたが、領主不在の期間が長かったために過疎化と高齢化が進んでおり、才人が拝領した時には2千エキュー程度にまで税収が落ち込んでいた。 + ガリア王国 君主:ジョゼフ1世→シャルロット女王 5カ国の中では最大の国。主にタバサの冒険の舞台となる。 王位継承権で激しい争いを繰り広げてきており、ジョゼフの即位時にも多数の貴族が粛清された。 しかし国内で問題ごとが発生した場合、超有能ななんでも屋(タバサ)が派遣されてきて解決してくれるので住みやすさでは一番かもしれない。 モチーフは南フランス。 国内の主な施設や地名 リュティス 首都。中心部にはヴェルサルテイル宮殿が聳え立つ。 かなりの都市であり、裏社会には違法性の賭博場などものきをつらねている。 ヴェルサルテイル宮殿 王国の中枢。敷地内に政治の中枢であるグラン・トロワとイザベラの住まうプチ・トロワがある。 東・西・南に分かれた広大な花壇が名物。内乱で一時半壊した。 サビエラ村 なんの変哲もない寒村だが、吸血鬼に目をつけられたことにより阿鼻叫喚の巷と化すことになる。 ファンガスの森 かつて生物の合成実験施設があった森。しかし施設は全滅し、解き放たれたキメラ動物が徘徊する魔境となった。 タバサが最初に任務を受けた場所である。 こんな名前だがウルトラマンダイナが戦ったりはしない。 火竜山脈 凶暴な火竜が生息する危険地帯。しかし珍味とされる極楽鳥の卵が採集できる。 ラグドリアン湖 トリステインとの国境にもなっている。湖畔にはタバサの実家がある。 アーハンブラ城 エルフとの戦争時には前線基地とされていた場所。両種族が取り合いを重ねたことで文化が入り混じった構築になっている。 ◇帝政ゲルマニア 君主:皇帝アルブレヒト3世 多数の都市国家群が集まってできた国家。そのため君主は始祖の血を引いておらず、始祖の血を受け継ぐトリステイン・ガリア・アルビオンの王族よりも格下扱いされている(*2)。 権力闘争の熾烈さはガリア以上であり、アルブレヒトはライバルを強制的に幽閉して帝位を獲得したほどの弱肉強食の世界である。 それゆえに実力や金が身分を決める国柄のため、伝統や権威を重視するトリステインからは嫌われている(*3)。 物語の直接の舞台となったことがキュルケの実家に寄ったときの一度きりであり、国内の細かい状況は不明。 モデルは神聖ローマ(ドイツ)。 ◇アルビオン王国→神聖アルビオン共和国 君主:ジェームズ1世→(共和国)皇帝オリヴァー・クロムウェル 空に浮かぶ巨大な浮遊大陸に存在している国。 しかし共和制を掲げる反乱軍レコン・キスタによって王権は滅亡し、後にトリステイン・ゲルマニア両国と戦争に入る。 軍事力は決して低いものではなかったが、虚無などの想定外の事態が続いて追い込まれ、ガリアの参戦でついに共和国も滅亡する。 敗戦後、領土は分割されて他国の管理下に入ったことまでが語られている。 気候的には寒冷。 モチーフはイギリス。 ※国内の主な施設や地名 ロサイス シティ・オブ・サウスゴータ ウェストウッド村 ◇ロマリア連合皇国 君主:教皇聖エイジス32世(ヴィットーリオ・セレヴァレ) ハルケギニア全土で信仰されているブリミル教の総本山である宗教国家。 教皇の権威は絶大であり、他のいずれの国も逆らえない。 しかし実体は他国からの貧民が群がるスラムと、富を独占する神官の間で極端な貧富の差が存在している。 モチーフはイタリア。 その他の国 ◇ネフテス ハルケギニアの東方にある砂漠地帯サハラに存在するエルフたちの国。 文明レベルはハルケギニアを大きくしのいでいるが文化はやや散文的。 ハルケギニアとの間には広大な森林地帯や灼熱の砂漠が存在するために、行き来は主に空中船に頼らざるを得ない。 モチーフはエジプト。 ◇クルデンホルフ大公国 君主:クルデンホルフ大公 トリステインの中にある自治領。 巨大な経済力を持っていて、トリステイン国内のほとんどの貴族は借金をしているために頭があがらない。 ◇ロバ・アル・カリイエ 厳密には国名ではなく、ネフテスのさらに東の地域全般を指す呼び名。「東方」という言葉は、ほぼこのロバ・アル・カリイエと同義である。 エルフという価値観の大きく異なる民族を挟んでいるため、ハルケギニアとはほとんど交流がないが、紅茶など、わずかに流入する物品があるらしい。シェフィールドはこの地域の出身。 追記と修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] アルビオンの滅亡はウェールズ父が何も考えないで処刑したからだよなぁ -- 名無しさん (2014-12-31 15 13 42) 東には砂漠とエルフの国、その向こうにロバアルカイリエだろ。西の果てには何があるんやろか -- 名無しさん (2014-12-31 15 31 10) 学生時代はこれで世界史の勉強してたな -- 名無しさん (2014-12-31 17 43 26) ハルゲニアのルイズへ届け! -- 名無しさん (2014-12-31 18 03 16) モデルとしては、トリステイン・フランス、アルビオン・イギリス、ゲルマニア・ドイツ、ロマリア・イタリアかな。ガリアはわからん -- 名無しさん (2015-06-28 21 36 50) トリスティンはネーデルラントでガリアはフランス -- 名無しさん (2016-03-19 17 14 36) やっぱ数百年後に西の海のかなたに超大国ができあがるんだろうか -- 名無しさん (2016-06-10 12 50 01) 極東には忍者のいる火の国とか水の国とかがあると妄想 -- 名無しさん (2016-11-03 20 21 20) ↑ぶっちゃけあのNINJA共が同じ世界線にいたらヤヴァイなんてレベルじゃない気が…… -- 名無しさん (2016-11-03 20 23 49) 革命の芽は摘まれてるし、結構ルイズたちの世代の責任でかいよな。この均衡も一世紀はもたんだろうというリアルな緊張感がある -- 名無しさん (2019-03-04 11 35 34) ↑1 そうはいっても、ルイズ達が動かなければ殆どの人間は最終章で明言された大破壊で皆死ぬという…誰がどういう行動を起こしても苦難の道であったことは間違いあるまいよ。 -- 名無しさん (2022-09-04 13 20 26) 再びあの世界が戦乱になった時にヤマグチ先生が生きていたら書いたであろう才人とルイズの子供世代が活躍するのかな? -- 名無しさん (2022-09-10 02 33 43) カンブリア紀にいたハルキゲニアって生物と名前が紛らわしい -- 名無しさん (2022-10-10 14 55 35) 良くも悪くも魔法至上主義社会といった感じの世界。その割には所々で潜在的に平民が台頭するのを恐れてる様子が窺えるので案外メイジも魔法を信用してない。 -- 名無しさん (2023-04-06 12 08 00) 名前 コメント
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前ページ次ページベルセルク・ゼロ 「リーダーの部屋は甲板にあるよ!」 パックの先導の下に装備を取り戻したガッツ、ワルド、そしてルイズはウェールズのいる船長室を目指す。 通路の向こうから5人もの空賊が迫ってきた。 「止まれ!」 「これ以上は進ません!!」 空賊達は剣を構え、突進してくる。ガッツが空賊たちの前に躍り出た。 「シッ!!」 一刀の下に突出してきた2人を斬り飛ばす。 「ヒュウ! さすが相棒だぜ! よっしゃよっしゃコレよコレ!! 燃えてきたぁ!!」 ガッツの手の中で歓喜の声を上げているのはデルフリンガーだ。 狭い通路ではドラゴンころしをまともに振り回すことは出来ない。 かつてのトリステイン学院での一件のように壁を破壊することを厭わなければ振れなくも無いが、何しろここは空の上。 ガッツはこの船がどういった機構で空を浮かんでいるのかまったく分かっていない。ほいほい船体を傷つけるような迂闊な真似をする気にはならなかった。 だが、通路が狭いことでデメリットばかりがあるわけではない。 今回のように敵が5人で襲ってきても同時に襲いかかれるのは精々2人まで。 ならばガッツにとって撃退することは容易い。 もちろん、それはガッツにとってだけのことではなく――― 「がっ……!」 ガッツが剣を振り切った隙を突いて襲い掛かってきた盗賊が崩れ落ちる。 それだけではない。後ろにいた残りの2人も既に床に倒れ付していた。 刺突剣(レイピア)の形状を模した魔法の杖を振り、血を払う。 撃退が容易なのは―――この『閃光』のワルドにとっても同様のことであった。 「すごい……」 ルイズはあっという間に空賊を撃退した2人の手際にただ感嘆の声を上げていた。 やはりこの2人の剣の腕は今までルイズが見てきたどんな男と比べても図抜けている。 特に、ルイズはまたもガッツに驚かされていた。 ルイズは今までガッツが強いのはあの大剣『ドラゴンころし』を振り回せるからだと思っていた。 あの馬鹿げた鉄塊を振り回せる常識外の膂力。それこそがガッツの強みだと。 もちろんそれもある。だが、それ以上にガッツの強さの基礎には揺ぎ無い技術があった。 それが、デルフリンガーを振るガッツを見て初めてわかったのだ。 「ホント、つくづく一体何者なのよあんたわ……」 ルイズは呆れ笑いのような表情を浮かべてガッツを見る。 ガッツの剣の技量は若くしてグリフォン隊の隊長に上り詰めたワルドと比較しても劣るものではないとルイズは感じていた。 (でも……2人の剣はとても対照的だわ) ガッツの剣は鋭い剣筋と強大な威力でもって鎧ごと敵を叩き割る言わば『剛』の剣。 対するワルドは変幻自在の剣筋で相手を惑わし急所を突く『柔』の剣。 もっとざっくり言ってしまえば直線と曲線、そんなイメージだった。 そんな正反対の2人であるのだが、その即席のコンビネーションは実に見事なものであった。 「これなら敵のリーダーの所まで無事にたどり着きそうね!!」 ルイズが自信満々にそう言った時。 がちゃり、と音をたて船室のドアが開き、 「よっしゃああああ!!」 ルイズは飛び出してきた空賊にがしっとあっさり捕まってしまった。 「…あれえ?」 「しまった! 待ち伏せしている敵がいたか!!」 先を行っていたワルドとガッツは立ち止まり、ルイズのほうを振り返る。 ルイズはその喉にナイフを突きつけられていた。 「あの馬鹿……なにぼっとしてやがったんだ……」 「放しなさいよ!」などと喚きながら空賊の手を逃れようともがくルイズの姿に、ガッツは頭を抱えた。 「へ、へへ……」 これで絶対的優位に立った空賊はにやりと笑ってみせる。 「この娘の命が惜しけりゃ剣を捨て…ってこらおい暴れるな!」 「うぎぐがぎぎぎ…! は、な、せぇええええええ!!」 空賊の制止の声もお構い無しにルイズはジタバタともがき続ける。 「こ、この…! 下手に暴れると喉が切れるぞ!! 大人しくしてろ!!」 だが断る。 ルイズはなおもお構い無しに暴れ続けた。 そもそもルイズがこんな形で敵にとっつかまるのは初めてではない。フーケの時に続き2回目だ。 既にルイズにはこんな状況に多少の慣れがある。決して自慢できることではないが。 「こ、んのぉぉおおおおおお!!!!」 ルイズの杖が光った。同時に空賊の頭上で天井が爆発する。 爆散した破片が空賊の頭を直撃した。たまらず空賊は頭を抱え悶絶する。 その間にルイズは空賊の腕から逃れると、 「ちょえいやぁああああ!!!!」 空賊の股間を容赦なく蹴り上げた。 「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」 声にならない声を上げて空賊は昏倒する。 「いつまでも足手まといでいられるかってのよ!!」 はあはあと息を整えながら、ルイズは胸の前で力強く魔法の杖を握ってみせた。 「凄いじゃんかルイズ!!」 「ああ、僕も驚いたよ!! 大したものだ!!」 「ふ、ふん! 私が本気を出せばこんなものなのよ!!」 こちらに駆け寄ってきたワルドとパックに胸を張ってみせる。 本当はナイフを錬金しようとしていたことは黙っておいた。 ガッツはというと、折角自分が自重していたのにほいほいと船体を壊してみせたルイズをじとりと睨みつけていた。 「駄目です! 敵止まりません!! 真っ直ぐそちらに向かっています!!」 通信筒から悲鳴のような報告が上がってくる。 「どういうことだ…連中の動き、まるでこの船の構造を把握しているようではないか!!」 「連中をこれ以上殿下の元に近づかせるな! 全戦力を持って圧殺しろ!!」 後甲板に設けられた船長室の中で3人の男達が焦りの声を上げている。 その男達はそれぞれがこれまでアルビオンを支えてきた重鎮であり、また同時に王国屈指のメイジでもある。 空賊の頭領に扮したウェールズの態度は驚き慌てる3人とは対照的だった。 通信筒に怒鳴り続ける男の肩を掴んで下がらせると、落ち着いた様子で口を開いた。 「船内に残る全兵士に通達。脱走した者達を食い止める必要は無い」 「殿下!?」 「船内では数の利を十分に生かすことができないからね」 目を見開いた重鎮達にウェールズは微笑みかける。 「現在戦闘可能な者は直ちに甲板に集結。そこで狼藉者を迎え撃つ。時間は幾許も無い。 急げ!」 そこまで言って通信筒から手を離すと、ウェールズはふうと息をついた。 「殿下」 「何かな?」 「恐れながら申し上げます。あまりにも危険です。殿下の目と鼻の先まで賊が近づくのを許すなど」 「しかしこれ以上最後に残ったアルビオンの勇者達の命を無駄にするわけにはいかない。私が敵にその身を晒すことで皆の命を買えるなら喜んでそうしようじゃないか」 「殿下……」 「おっと、そうだ」 ウェールズは思い出したように再び通信筒に歩み寄る。 「操舵室、船をしばし静止させろ。甲板で祭りが始まるからな」 重鎮達は苦笑を浮かべ、やれやれとそれぞれに頭を振ってみせた。 「どうした? 私は何か間違っているか?」 「ええ。先ほどの言葉遣い、とても王族に相応しいものではありません」 「くく、長く空賊の頭なんてやっちまったからな。たまに混ざっちまう」 「お戯れを」 ウェールズと3人は互いににやりと笑ってみせた。 程なくして、甲板には20人を超えるメイジたちが集結していた。 集結したメイジはその全てが甲板に上がる階段を注視している。 「来たぞ!! あっ…!」 階段の下を覗き込んでいた見張り役の男の額にナイフが突き立った。 次いで聞こえてくる、階段を駆け上る足音。 甲板にいた全員が一斉に杖を構え、魔法を放つ準備を整える。 だが、飛び出してきた影に、その場にいた全員が虚を突かれた。 小さな虫のようにも見えるその姿。全く想定外の乱入者。 賊は黒尽くめの剣士と長髪のメイジ、それと桃色の髪をした少女だったはず。 見覚えの無い妖精(ピスキー)の姿に魔法の発動が遅れた。そしてその隙をついて、 「んパックスパーク!!!!」 小さな妖精の体が強烈な光を放つ。パックの姿を注視していた全員の目が眩んだ。 パックの『パックスパーク』の光を合図に今度こそガッツとワルドが飛び出してくる。 「あ、相棒お願い! もう少し俺を使って!? あ、ちょ」 デルフリンガーを鞘に戻し、ガッツはその背に負ったドラゴンころしに手をかける。 そして―――! ド ゴ ン ! ! ! ! 強烈な轟音と共に、一振りで5人のメイジたちを吹き飛ばした。 「なんという……」 船長室に備え付けられた小窓から甲板の様子を伺っていたウェールズ達は言葉を失っていた。 あれは剣なのか? あんな馬鹿げた鉄の塊が? 馬鹿な、あんなものを人間が振れるはずがない。ああ、つまりアレは化け物なのだ。道理で船内で進撃を止められないはずだ。 最初の一撃で5人を死に至らしめた化け物は、既に剣を斬り返し、さらに犠牲者の数を増やしている。 甲板に戦場を移したのは間違いだったか? 船内で十分に己の利を生かせなかったのはこちら側だけではなかったのだ。 いや。ウェールズは思い直す。 最初の光で目を眩ませていた者達が立ち直り始めた。彼らの魔法が発動すれば間違いなく賊を討つことが出来るだろう。 何故ならば、今甲板に出ているアルビオンの勇者達は全員がトライアングル以上のメイジなのだから。 だが、またもウェールズの誤算。ワルド。彼もまた、スクウェアのメイジなのだ。 ガッツより一足遅れて甲板に躍り出たワルドは、しかしその場にいた誰よりも早く術式を完成させた。 「『エア・ハンマー』!!」 ワルドによって生み出された風の槌がガッツの体を叩く。 ガッツの体が吹き飛び、その場にいた20余名の頭上を飛び越え―――船長室の前に降り立った。 「しまったあ!!!!」 甲板に集結したメイジの誰かが叫ぶ。 「殿下!! お下がりください!!」 ドアを開け、中に飛び込んできた瞬間即死級の魔法をぶつけてやる。 ウェールズの護衛として船長室の中に残っていた初老のメイジがドアを注視する。 またも、愚策。全てが裏目。 バ ガ ァ ン ! ! ! ! 鉄の塊が壁を突き破り、黒い剣士が飛び込んでくる。 「馬鹿な…」 その姿を認めた初老のメイジは言葉を失った。 ここの壁は、砲弾の直撃にすら耐えうる強度なんだぞ――――? それでも初老のメイジは即座に自分を取り戻し、杖を黒い剣士に向ける。だが、その一瞬の間が致命的だった。 壁を突き破り猛烈な勢いで侵入してきた黒尽くめの男は、既にウェールズの身柄を拘束していた。 ガッツは床に引き倒したウェールズの背中に圧し掛かり、その喉に投擲用のナイフを突きつけて、 「さて、取引といこうじゃねえか」 そう言って、不敵に笑ってみせた。 アルビオン本国艦隊旗艦イーグル号。 その船長であるアルビオン王子、ウェールズ・テューダーはその身を縄で拘束され、船長室に備え付けられた豪華な椅子に座らされていた。 その喉元には変わらずガッツのナイフが突きつけられている。 ガッツの隣にはワルドとルイズ(甲板突撃時居残りさせられた)の姿もあった。 豪華なディナーテーブルを挟んだ向かい側にはウェールズの護衛を務めていた初老のメイジを始め、数人の男達が集まっていた。 「…何が望みだ」 口火を切ったのはウェールズだった。それは喉から搾り出すような声だった。 「アルビオンへ向かってもらいたい」 答えたのはワルドだ。 「アルビオンへ? 何しに? 貴族派にでも加担しに行くのか?」 「馬鹿言わないで!」 ルイズが憮然とした顔で声を上げた。 「誰が薄汚い反乱軍に加勢なんてするもんですか! 私達はアルビオンの正当なる政府、つまりは王室への使いなの!!」 「王室に? お前、どこからの使いなんだ?」 ウェールズの顔が呆然としたものに変わっている。意外なウェールズの反応にルイズの方がたじたじになるほどだった。 「な、なによその反応。トリステインよ」 今度こそ、ウェールズの目は点になった。トリステイン。愛しいアンリエッタの国。 ということは、つまり? 「ふ、ふふふ……」 思わず笑いがこみ上げて来た。なんということだ。では彼らは何のために死んだのだ。 いや、これは事故。そう、これはもはや事故としか言いようがない。 「はっはっはっは!!!!」 「な、何よ! 何がおかしいのよ!!」 突然笑い始めたウェールズにルイズは肩をいからせる。 「いや、失礼。なあ、そこの君。名は何と言う?」 「…ワルドだ」 ワルドもまた、ルイズほどではないが困惑していた。何かこの盗賊のリーダー、先ほどまでと雰囲気が全く違う。 「先に名乗らせた無礼を許してくれ。何しろ、このナリで私の名を名乗ってもとても信用されないだろうからね。では、ワルド君、ひとつお願いがあるのだが」 「何だ?」 「私の髪の毛を取ってくれないか?」 「はあ?」 ルイズが思い切り困惑の声を上げた。 ワルドは何も答えず、ある種の予感を持って空賊のリーダーのぼさぼさに荒れた黒髪を引っ張った。 するり、とあっさり黒髪のカツラが外れた。 「え!?」 と目を丸くしているのはルイズだけで、ワルドは心中やはりかと呟いていた。 「ではその髭も?」 「うむ、そういうことだ」 ワルドがウェールズの顔の髭を掴み引っ張るとそれも偽物だったらしく、びりびりと音を立てて剥がれた。 「はっ!? えっ!? はっ!!?」 ルイズの困惑は止まらない。そこにいたのはもう粗野な空賊の頭領などではなく、金髪の凛々しい若者だった。 しかも、しかもしかもルイズの記憶が正しければその顔は。 「では名乗ろうか。アルビオン皇太子、ウェールズ・テューダーだ。こんなナリでは格好がつかんがね」 ウェールズは縄で拘束され、喉にナイフを突きつけられた自分の姿を一瞥して苦笑した。 「では用件を伺おうか、トリステインからの大使殿。その前にこの縄を解いてくれるとありがたいが」 「はあ~~~~~~~~~!!??!!?!?」 ルイズの渾身の叫びが船長室を抜け、大空へと溶け込んでいった。 ルイズ達を乗せたイーグル号はウェールズの居城ニューカッスルへと向かっている。 ルイズ達がウェールズの元を訪ねた目的、『アンリエッタの手紙』がそこにあるという話だったからだ。 今度は倉庫などではなく、立派な客室に案内されたルイズであったが、今は甲板に出て風を感じている。 頬を撫でていく風は心地よい感触であったが、ルイズの顔は浮かなかった。 視線を下に落とす。 甲板に付いた赤い染みが目に入る。 つい先ほどまで、ここにはたくさんの死体が転がっていた。 トリステインからの大使として来た筈の自分達が、そうとは知らなかったとはいえアルビオンの兵を何人も殺したのだ。 その事実はルイズの心に深い影を落としていた。 そのことについて謝ったとき、ウェールズは気にしなくていいと言ってくれた。 『君たちは精一杯自分達の任務を遂行しようとしたにすぎない。むしろ、悪いのはこちらだよ。知らぬこととはいえ、他国の大使を捕らえて監禁したんだ。これはその罰といってもいい』 そんな風に言ってくれた。だが、ルイズの心は晴れない。 『いいかいルイズ。客観的に考えるんだ。客観的に見て、あの時相手を空賊として認識していた僕達の行動に責められる謂れはないよ』 先ほどワルドはそう言って俯く自分を励ましてくれた。だけど、ルイズの顔は上がらない。 理屈で考えれば確かにそうだろう。だが、そうやって心を整理できるほどルイズは大人になってはいなかった。 ガッツは―――主人の気持ちを一番汲み取るべき立場にいるはずの使い魔は、まったく気にしちゃいない様子だった。 アルビオンの兵を殺してしまったことについても、それでご主人様が落ち込んでしまっていることについても。 パックはりんごに夢中でかぶりついてた。 あ、なんか腹立ってきた。 怒りの力でルイズは何とか顔を上げる。 誰かの視線を感じた。 振り返る。 少年がいた。恐らく、ルイズとそう変わらぬ年頃の。 亜麻色の髪をぼさぼさに伸ばした少年がこちらを睨みつけている。 「な、なによ?」 「……ふん」 ルイズが声をかけると少年は憮然としたまま視線を逸らし、船内へと降りていった。 「……なんだってのよ」 やはり、歓迎されているわけがない。 それをあからさまに示した少年の態度に、ルイズは再び肩を落とすのだった。 「それにしても……」 ルイズは少年の顔を脳裏に浮かべ、首を捻る。 「どこかで見たことあるような…?」 しかしふわふわした記憶は形にならず、ルイズは首を傾げたままあてがわれた自分の部屋に戻っていった。 前ページ次ページベルセルク・ゼロ
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、自らが召喚した使い魔に驚愕した 彼女はトリスティン魔法学院の制服、白いブラウスにマント、黒いTバックのパンティ姿のまま立ち尽くす 召喚されたのは平民の男だった、身長2メイル以上もある大男、肌にピッタリした扇情的な服を着ている 偉そうに葉巻など吹かすその使い魔にルイズは契約のキスをした、ちょっといい男だな、と思った その男、かつて宇宙海賊として名を馳せた男はルイズの使い魔としての日々を送ることになった その使い魔はメイドの娘にちょっかいを出したが、逆に仕事の手伝いをさせられる羽目になる 「ハーイ、坊ちゃん嬢ちゃん達、イタズラかお菓子か、行儀いいコにはケーキをあげるよ~」 彼は香水のビンを拾い上げた事がきっかけでギーシュに決闘を挑まれた ギーシュの出したゴーレムから、そのやたら逃げ足の早い使い魔は必死で逃げる 「平民よ、その剣をとりたまえ」 その時、使い魔の左手に刻まれたガンダールフの刻印が光った、が、使い魔はその左手を投げ捨てた 「これが答えだ!」 使い魔の左手があった所に「銃」が現れた、銃は光を放ちゴーレムを撃ち飛ばす 「・・・まいった・・・せめて名前を教えてくれ」 「俺か?…そうだな、ワイアット・アープとでも呼んでくれ」 その後、使い魔はルイズと共にアルビオンに向かい、ワルドと対決することになる 「土は偏在する、私は土の力で自らの体を水晶に作り替えた、貴様の持つ光の銃は効かない」 その時、使い魔は左手で腰から下げたコルトパイソンを抜き、目にもとまらぬ早撃ちで鉛の弾を浴びせる クリスタル・ワルドの水晶の体は砕け散った 「…女からの贈り物は大事にするもんだってな…」 後に戦艦レキシントンを「タートル号」なる異世界の船で撃沈し アルビオンの7万の兵をアーマロイド・レディなる鉄の女と共に退けた使い魔は勇者として語り継がれた ルイズは忘れ去られた
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アルビオンでの戦いは貴族派が勝利した。 それによってアルビオン王国は神聖アルビオン共和国へと名を変えた。 ウェールズの事に関しては、今はトリステイン国が匿っていて、今の所アルビオンが何か言ってくる気配は無いらしい。 ゲルマニアとの同盟も締結され、とりあえず一安心だ。 おれとしてはとても疲れたのでしばらく休みたいのだが生憎ルイズには授業がある。 別におれには関係無いから寝てようと思ったのだがルイズが言うには 「使い魔なんだから一緒に来なくちゃダメ」 だそうだ。でも正直寝ていたい、のでルイズにちょっと聞いてみる。 「おれの有休ってどれくらいある?」 「アンタにそんなもの無いわよ」 使い魔には有休が無いらしい。でも意味が通じたって事はトリステインには有休制度が有るのか? 「そもそも有休って何よ?」 無かった。 「知りもしないのに否定したのかよ!」 「アンタの事だからどうせつまらない物でしょ」 有給休暇はつまらなくなんか無い! 給料の有る休みの幸せをお前たちに分けてやりたいくらいさ! おれは使った事ないけどね。 なんだかんだで授業に行く事になった。 歴史や公民ならともかく、魔法関連の授業に興味は無いのにな。 仕方ないし日当たり悪いけど教室で寝てよう。 教室に入った瞬間、他の生徒達に取り囲まれた。 ヤバイな、何がバレたんだ? 寮の誰かの扉をノックしてすぐ逃げるのを一晩中続けた事か? ヴェルダンデと協力して底に泥水を仕込んだ落とし穴を掘った事か? 広場に一晩で宇宙人に向けてのメッセージを書いた事か? 廊下に有る絵とか像の向きを全部変えた事か? ヤバイな、心当たりが多すぎて迂闊に動けないぞ。 「な、何よ」 そうだルイズ。おれが動くとヤバイからお前が動いてくれ。 「あなたたち、授業を休んでどこに行っていたの?」 なんだ、そんな事か。 焦って損したぜ。何せ心当たりが三桁以上あるからな。 ルイズが適当に誤魔化し、席に着く。 しばらくして妙に機嫌の良さそうなコルベールがいた。 変な物を持ってきてるけどアレが関係してるのか? コルベールはルイズを見つけるとさらに機嫌が良くなった。 「やや、ミス・ヴァリエール。今日からは授業に復帰ですかな?」 「はい、勝手に休んだりしてすいませんでした」 「それはいけない事ですが、今日はとっておきの授業ですからな!今日休まなかったのは良い事ですぞ!」 テンション高いなー、ちょっと休んだ事より今日休まなかった事を良いなんて言ってるよ。 ここはもっと厳しくすべきだろ。当たり前の事で褒めてるとソイツはろくな人間にならないんだから。 さっきも言ったがおれは魔法の技術に興味は無い。 戦闘になったら相手が四系統の内どれなのかなんてのはイヤでも考えなきゃならなくなる。 そのために魔法の種類を覚えようかとも思ったが途中で意味がない事に気づいて止めた。 使用者による個人差が大きいからだ。 たとえば同じゴーレムを作るにしてもギーシュとフーケで差があるように、この魔法はこれくらいの強さ、と決められないのだ。 だから結局は理論よりも、実際に戦ってみての感覚で作戦を立てるしかないのだ。 「さてと、皆さん」 コルベールが授業を始めた。 でも授業なんて聞かないで寝ちゃおう。 ―――夢を見た。 夢の中でおれは暗い所にいて、そこは辺り一面穴だらけだ。 その穴から花京院とアヴドゥルが頭を出しては引っ込みを繰り返している。まるでモグラ叩きだ。 ぴょこ 「久しぶりだな、イギー」 ぴょこ 「ジョースターさん達はDIOを倒したようですね」 ぴょこ 「お前は大変な事になってるようだな、占ってやろうか?」 夢の中とはいえ久しぶりに顔を見れたのはうれしい、だが… 「ぴょこぴょことうるせーんだよ!!」 攻撃する。気がついたらコルベールの持ってきいた変な物を壊していた。 「あれ?」 壊した物はヘビの人形だった。 どうやらコレがぴょこぴょこと音を出してたらしい。 持ち主であるコルベールは何も言わない。言わないというよりは言えない、放心状態なのだ。 「これは、その、ルイズにやれって言われて仕方なく」 とりあえず言い訳してみる。嘘だけど。 「ミス・ヴァリーエール?」 「言ってません!」 ルイズの必死の抗議。 「なんにせよ使い魔の責任は主人の責任だ!」 おれも必死にシャウト。 「イギー!ちょっと黙ってなさい!」 おれはその瞬間ルイズに向かって走り出した。 ルイズには当然何故走りだしたのか分からないので、身構えて目をつぶる。だがそれは失敗だ! おれは身構えているルイズの横を通り過ぎ、窓をザ・フールで攻撃! 窓ガラスを割り、そこから飛び出す。 ザ・フールの飛行形態で緩やかに飛びながら教室を離れる。 その直後に教室で爆発が起きた。 「うわ、スゲー、映画みたいな演出だな」 多分おれの下から見上げた視点が絵になると思う。脱出者の後ろでボーンみたいな感じで。 そういえばルイズのこと主人って言っちゃったな。 責任を押し付けた以上、少しは使い魔らしくするべきだろうか。 思い出す。フーケのゴーレムに潰されそうになる姿を。ワルドの正体を見抜けなかった姿を。 うん、別に主人らしい事なんてされてないし今まで通りで良いな。 To Be Continued…
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鋼鉄牙原(PixivファンタジアⅤ) ガルガディア帝国西部にある原。 公式イベント『三帝決戦』の舞台。 ガルガディア帝国の鋼鉄都市ファングヘイム近郊にある原。 エデリオン戦役終盤、アルビオンを落としたトライガルド、 アークサンドヒルを落としたザイランス、両帝国から侵攻を受け、 ファングヘイムに戦力を集結させたガルガディア帝国軍との間で 三帝国軍による最終決戦『三帝決戦』が行われた。 .